第55回近畿産業衛生学会
学会長挨拶


 第55回近畿産業衛生学会は、「実効性のあるストレス対策と働きがいの向上をめざして」をメインテーマとして、特別講演とシンポジウムを企画しました。

 今回6年ぶりに兵庫県で開催されます。この6年間を振り返れば、2011年には東北大震災の辛い経験がありましたが、その後、アベノミクスといわれる経済政策によって停滞していた日本経済にも回復の兆しが見えてきました。それに伴い、近畿圏を訪れる外国人観光客も急増し、改めて日本の自然の美しさと豊かな文化遺産に世界の注目が集まり始めています。とはいえ、政治、社会経済とも大きな変転が続き、我々は今も多くの課題に直面しています。

 産業衛生の課題の中でも、とりわけ労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」が、2015年12月1日に施行されるため大きな関心事となっています。ストレスチェック制度の目的は、当初のスクリーニングではなく、1次予防に重点がおかれました。ここでいう1次予防は、「個人にストレス状況の気づきを促し、状況に応じて職場環境改善をはかることで、メンタルヘルス不調の発症を未然に防ぐ」ことです。しかし、この制度を実効性のあるものとするためには、その活用のあり方や課題について十分検討しておかなければならないと考えています。

 そこで、施行直前の本学会では、精神障害の労災認定に関する研究と実践の第一人者である東邦大学医学部精神神経医学講座(佐倉)の黒木宣夫教授に、「企業のリスクアセスメントとストレスマネジメント−精神障害の労災事例を中心に−」と題し、メンタルへルス不調のリスク軽減のヒントとコツにつながる特別講演をしていただきます。シンポジウムは、「変わる職場ストレスとメンタルヘルス教育のあり方−労働安全衛生法改正によるストレスチェック制度の義務化を見据えて−」をテーマとしました。このセッションでは、産業保健の最前線でご活躍中の多様なシンポジストによる1次予防を目的とした実効性のあるストレス対策の具体的な制度設計やメンタルヘルス教育について議論を深めたいと思います。

 一般演題は、産業衛生のさまざまな分野の演題応募を期待しています。なお、優秀な研究発表に対しては「近畿産業衛生学会優秀演題賞」を、若手研究者には「第55回近畿産業衛生学会若手奨励賞」を設けますので奮ってご発表下さい。

 本学会の会場である兵庫県医師会館はJR三ノ宮駅より徒歩3分、懇親会場の神戸三宮東急REIホテル(旧:神戸東急イン)は徒歩2分と大変アクセスのしやすい立地です。多数の皆様が本学会に参加されますよう、実行委員会、事務局とも鋭意準備を進めておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。